2021年に読んだ本は107冊でした。なんとかノルマクリア。
シリーズものはまとめていたり、複数回読んだものも1冊としてカウントしているので、実際に読んだ数と記録上の数は一致しません。しばしば感想を添えています。
2.赤枝香奈子『近代日本における女同士の親密な関係』角川学芸出版
4.隅田正三『「島村抱月」 : 幼年期と生いたち』波佐文化協会
5.川副國基『島村抱月―人及び文学者として―』早稲田選書
著作を読むにあたって、その著者の来歴や当時の背景を知っておくのって大事なんだなあという当然のことを改めて知った1冊。いきなり『囚われたる文芸』に手を出して読めるわけがないだろうが。
7.倫理資料集編集部『倫理資料集』山川出版社
9.石川文康『カント入門』筑摩書房
「百合」という言葉の由来を紹介する際にほぼ必ずと言っていいほど引用される本。百合、というか女性同性愛について少し勉強していた時期に読んだ。百合に限らず知識が雑多に散らばっているので読んでて楽しかった。
12.森井ユカ『突撃!オトナの大学院』主婦と生活社
13.萩埜まこと『熱帯魚は雪に焦がれる 1~8』KADOKAWA
14.森信成『唯物論哲学入門』新泉社
数年ぶり、たしか4回目の通読。今ではもうそのテキストの全てを承認するわけにはいかないけど、それでも最も影響を受けた本の1つだなとしばしば思う。
16.岡潔『春宵十話』光文社
17.神林恒道『近代日本「美学」の誕生』講談社
19.つるまいかだ『メダリスト 1~2』講談社
フィギュアスケートで世界を目指す少女とそのコーチの話。素の性格が他人と相容れない人とか時代の趨勢に合わなかっただけで適切に評価されない作品とか、そういうものにばかり入れ込みたくなる性格なので、2巻を読んでから完全にミケに肩入れし始めた。
友達に勧められた本。読み終わって「『月と怪物』が一番好きだった」と報告したら
「うわ一番分かんないやつだ」と言われてシュン…となった。『月と怪物』が好きな人は間違いなくこれも好きなので、よかったら読んでみてください。
いくつか読んだ中では最も平易な入門書だと思う。特にp.116「大気中の……」の説明は非常に参考になった。そんなピンポイントなことあるか?
29.東浩紀『動物化するポストモダン』講談社
34.内田義彦『読書と社会科学』岩波書店
入門書を数冊読んで意気揚々と手を出したが難しい……。話を聞く限りではかなり魅力的な思想のように思えるので、もうちょっと格闘する(そもそもスピノザに手を出したのは抱月の理論を理解する上で必要だったからなんだけど、当初の目的から完全に逸れた)。
39.未幡『私の百合はお仕事です!8, 9』一迅社
全然面白かったし、矢野は本当に偉いと思うけど、俺が本当に見たかったのは「『私はまた失敗した』とかほざいて陽芽ちゃんと仲直りできず、以後一度も陽芽ちゃんと会わないまま時は流れて30歳になり、社会人として立派に働きつつも、ふとした瞬間に過去を思い出しては(…あの時どうすれば良かったのかなぁ)と学生の頃の淡い記憶を未だに引きずりながら、お茶をする度にそのことについて話し始めるので純加に(コイツまだ言ってるのかよ…)と思われている矢野」だったんだよな…。
41.上枝美典『「神」という謎』世界思想社
43.みかみてれん『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ! (※ムリじゃなかった!?) 3』集英社
44.岩佐壮四郎『島村抱月の文芸批評と美学理論』早稲田大学出版部
45.友利昴『知財部という仕事』発明推進協会
現状もっとも安価かつ入手しやすい抱月の評論・論文集。『囚われたる文芸』と自然主義五部作が収録されているのは大きいけど、『審美的意識の性質』とか『美学と生の興味』は収録されていないので、抱月美学の勉強には不十分。誰か『新美辞学』を復刊してくれ…。
50.野内良三『日本語作文術』中央公論新社
51.ベンジャミン・リベット『マインド・タイム』岩波書店
『安達としまむら』の批評をする中でお世話になった本。脳に関する知識を全く持ち合わせていない中で読んだので、よく理解できない部分もままあった。基礎を勉強した上で再読したい。
55.理化学研究所 脳科学総合研究センター編『つながる脳科学 「心のしくみ」に迫る脳研究の最前線』講談社
57.アーサー・ケストラー『ホロン革命』工作舎
抱月とスピノザを多少やっていたおかげで比較的容易に理解できた。もっと早く読んでおけばよかった。
61.大塚英志『社会をつくれなかったこの国がそれでもソーシャルであるための柳田国男入門』KADOKAWA
基本的に大塚英志は好き。柳田の自然主義/ロマン主義というレイヤーは、ケストラーの自己主張情動/自己超越情動のホロンと通底する部分があるように思う。「ここではないどこか」を求めるロマン主義と、「より上位の有機体の一部として包摂されたい」という欲求。そういう形で自分の考えの中に組み込むことは可能であるように感じるので、柳田の著作に手を出そうかなという気にしてくれた。
63.小林武彦『生物はなぜ死ぬのか』講談社
64.きたみりゅうじ『キタミ式イラストIT塾 応用情報技術者』技術評論社
以降、情報系の書籍が続くが、これは諸々の事情で応用情報技術者試験を受ける必要が生じたため。これらを通して情報系に適性がないことを完全に自覚したので、まあ全体としてはいい経験であった。
65.長橋賢吾『これならわかるネットワーク』講談社
68.岡嶋裕史『暗証番号はなぜ4桁なのか?』光文社
71.大塚英志 ササキバラ・ゴウ『教養としての〈まんが・アニメ〉』講談社
72.法制執務・法令用語研究会『条文の読み方 第2版』有斐閣
はじめて氏の著書を読んだ。引用が大量にあり、話もしばしば脱線するので必ずしも文章として読みやすいというわけではないはずなんだが、一方で大塚英志のような読みやすさがあり、読み進めるのが楽しかった。おそらく自分に合った文章ということであって、そういう文章を書く人に出会えると嬉しい。
76.千葉聡『進化のからくり』講談社
実は読んでなかったという(今まで何してたんだよお前は)。
81.岡田斗司夫『オタクはすでに死んでいる』株式会社ロケット
2021年にやった美少女ゲーム
1.ねこねこソフト『ルリのかさね ~いもうと物語り~』
色々とシステムが怪しい。ストーリーは悪くないが、まあこの程度のしんみりした話なら他にもあるかなという印象も強い。楽曲が良い。
2.すみっこソフト『はるまで、くるる。』
3.同上『なつくもゆるる』
4.同上『あきゆめくくる』
はる→あき→なつ の順にプレイ。いずれも非常に面白く、渡辺僚一に完全にハマった。シンプルにお話が一番面白いのはなつ、SF的にははる。特に後半の怒涛の解説は記憶消してもう一度読みたい。
5.ABHAR『水平線まで何マイル?』
う~ん……。類似したコンセプトの『あの晴れわたる空より高く』という作品を以前プレイしたことがあって、それが面白かっただけに、本作は相対的に期待を外れたように感じられてしまった。総重量の軽量化のために朋夏が髪を切ったシーンとかは結構好きだったんだけどね。
6.あっぷりけ『月影のシミュラクル』
無難に良かった、という感じ。悪く言えばそこ止まり。いくつかのEDは割合好きであったし、いい加減ボードリヤールを読まなきゃなーという気分にもさせてくれた(本作はそこまで真剣にシミュラークルを取り扱っているわけではないけども)。
7.チュアブルソフト『アステリズム -Astraythem-』
先に言及した『あの晴れわたる空より高く』を手掛けた制作陣による渾身の一作。『はれたか』がアホみたいに面白かっただけに本作への期待の度合いもかなり高かったのだが、そのハードルも難なく越えてくれた。とりわけ3章の、名月の夢を見る九十九くんには久しぶりにボロボロ泣かされた。ああいうシーンが好きすぎる。バイアスがかかっている可能性を加味してなお、イシダPは紛れもなく鬼才である。
8.10mile/PROTOTYPE『カタハネ』
PSvita版をプレイ。中里十の小説みたいな作品だなと思った。作風とかでなく、プレイヤーとの相対的な立ち位置において。ちょっとやらかしの具合が酷すぎるのだが、なんだかんだ言ってワカバが好きだったりする。PC版をやった友人と話して、「これエロいらないどころか邪魔じゃね?」という結論に達した。OPの『Alea yacta est!』もかなり強い。
9.bitterdrop『波間の国のファウスト』
面白いんじゃないか、といういつもの頼りない直感が珍しく当たった作品。本当に何の知識も持ち合わせていないけど、もし経済小説が概ねこんな感じなのだとしたら読んでみたいと思える程度には楽しめた。というか早乙女凪が可愛すぎる、こういう女の子一生好きだな…。『ハンティング・グラウンド』は名BGM。余談として、シナリオの佐藤心は東浩紀やササキバラ・ゴウ辺りとつるんでいたことがあるらしく、へ〜となった。
シナリオライターお三方の惜しみない努力が感じられる世界観および設定に、一昔前の厨二をコーティングした良作。なんだかんだ言って男の子なので、長ったらしい呪文詠唱が好きだったりする。ただ、続編とかOVAを追いかけるほどではなかったかな。ライターの知識が総動員された結果としての雪子の物知りが良かったのと、菊理姉さん(年下)がずば抜けて可愛い。
11.NO BRAND『Chrono Box』
あんまり合わなかった。グロがだめ、とかそういうことではなく、端的にストーリーが期待していたほど面白くはなかった。こういうテーマだと評価が両極に転びうるから、得てして難しいね。
12.The Dungeon In Yarn『trade▼off』
フラグ管理が割と大変なんだが、それを補って余りある面白さだった。足掛け10年近くかかった労作とのことで、よくぞ作りきってくれたという感じ。やはり佐倉あすみが可愛い。夕子ルート後半は特に、これが”いい女”ってやつか…となった。オールクリア後、「最初から」を押して改めて読む『……ずっと、こうするつもりだったから……』は流石に壮観。
13.KAI-SOFT『青い空のカミュ』
主人公2人の教養がすごい。制作陣いわく「アートとしての美少女ゲームを目指した」本作は、部分的とは言え、たしかにその心意気が伝わってくる出来だった。一方で、内に込められた思想は残念ながらあんまり響かなかった、ないし理解出来なかった。まあそういうこともある。
14.ニトロプラス『スマガ』
長過ぎるッピ! なんというか、予想していたのと大分違ったんだが文句は言うまい。ループものの見どころたるシンプルなトライアンドエラーは良かった、もうちょっと試行回数が多ければさらに良かった(2000回では少なすぎると感じるのは渡辺僚一に毒されすぎか? 実際にお前がやってみろという話である)。あと当然のように楽曲群が軒並み強い。How far is it to his goal? 素直にやって良かったなという余韻が残る作品ではあったが、エンディングだけがネックだった。都合が良すぎるというのではなくて、あれは死を受容するまでの過程なんだから、殺したほうが絶対に良いと思う。続編ファンディスクが百合っぽいのでちょっと気になっている。気が向いたらやるかもしれないし、やらないかもしれない。
15.SILKY'S PLUS『ふゆから、くるる。』
太陽の天才児・渡辺僚一によるSF四季シリーズ最終作。最終作にふさわしい圧巻の出来であった。単純な面白さで言えばはる、なつには一歩及ばないんだけど、最も印象に残った作品で言えば間違いなくこれ。ロマン主義と絡めて長めの文章をいずれ書きたい……。
16.スカイフィッシュ『はるかぜどりに、とまりぎを。』
何が悪かったのかよく特定できないんだが、あまり肌に合わなかったためかなり序盤で切ってしまった。美少女ゲームは「あらすじやムービーでは良さそうだなと思ったが実際にプレイしてみるとそうでもない」というケースがなぜかアニメに比べて多いのだが、本作もその1つだった。直感とプレイしてみての感覚を一致させるための礎にしてしまったなぁ。
17.Whirpool『pieces/渡り鳥のソムニウム』
ほぼ同上と言っていい。小鳥遊紬√だけ終わらせて合わなかったので切った。この子のCV.小鳥居夕花感は異常。
18.暁WORKS『ハロー!レディ』
評判が良くてセール中だったので購入。完全に釣られた。主人公をカッコいいと思うか否かが決定的な分かれ目なんだろうなと思う。レトリックというか、語彙や言い回しが大仰な割に思想は大したものではないという印象が拭えず、空子√を途中までやった後、続ける意義を見いだせなかったので切った。ヒロインは割とみんな可愛い、これが一番大事。サブカルチャー。
19.半端マニアソフト『indigo』
シナリオが渡辺僚一ということで購入。作中で描かれる戦闘は基本的に遭遇戦なので、ストーリーを読み進めるにも常に一定の緊張感がある。『なつくもゆるる』でも思ったが、渡辺僚一の描く戦闘シーンは心理戦+技術のやり取りが主軸で、そのヒリヒリする感じが非常に良い。その他にも先述したSF四季シリーズのエッセンスを各所に感じた。つまり、仕組みを知らなくても電子レンジは使えるし、先祖返りしたマンイーターは人間を喰らうし、アストロラーベオートマトンは常識を超えているし、殺人鬼の女の子は可愛いのだ。あと、西井さんがもう笑っちゃうくらいカッコいい。
名作と呼ばれるだけあって、流石に面白かった。感想は11月の雑記に書いたので割愛。
21.Chelseasoft『ソラコイ』
方向性は決して悪くない(むしろこういうのが好みである)んだが、なんたって感情描写が薄すぎる。ソラがいかに主人公を好いていたかを描くことでこそ、最後のシーンでカタルシスが爆発するというものだろうに。そういう意味で、上述の『アステリズム』がカタルシスの仕込みに1章を費やしたのは良い判断だったなと。上手く料理すれば秀作たり得ただけに非常に残念ではあるが、ワンコインならまあ許容範囲かなという感じ。少なくとも『スマガ』よりは良いエンディングだった。あと、わざわざ映画を題材として取り上げた割にライターの知識が薄い点は気になった(勿論、そこは主題ではないけれども)。
22.SukeraSparo『ことのはアムリラート』
う~ん……。良くも悪くも百合だったというか、百合でしかなかったというか。正直思うところがない。3つあるEDの中で、2人で一緒に元の世界に戻るEDだけTrue扱いしてるのは正直モヤッた。そりゃそうなるのが一番良いだろうけど、それすら克服するのがロマンティック・ラブではないのか…? リンとレイさんとで微妙に日本語が通じない点など、変なところ細かいなと思っていたら、どうやらシナリオライターが『カタハネ』を書いた人だったらしく納得。定期的に「やはり自分は百合に向いていないなあ」ということを確認している。
23.SILKY'S PLUS『缶詰少女ノ終末世界』
これまでにいくつか渡辺僚一作品をプレイしてきたわけだが、その中でも上位に食い込む面白さだと思う。つくづく思うが、やはり日常からシリアスへと急変する際の緊張感の演出が非常に上手い。特にミサイルサイロでの一連の話は読んでいて思わず息を呑んだ。巷では、本作品にSF四季シリーズらしさを期待すると裏切られる、という意見があるらしいが、まったく同意しかねる。むしろ過去作に暗示されているロマン主義(「ここではないどこか」に行きたい、大きなものに巻き込まれたいという欲求)が、本作ではかなり直接的に描かれているのも加味して、SF四季シリーズの延長線上にある作品だと感じたがなぁ。また、本作品同様、『ふゆから、くるる。』にもふたなり要素が出てくるし、『あきゆめくくる』では、反政府活動で睾丸を失った過去を持ち、性的少数者の象徴であるレインボーカラーを身にまとう襷ノアが登場するなど、(これらをひとまとめにくくっていいのか、という問題はいったん置いておき)最近の氏の作品には身体的な性と精神的な性の乖離・不一致という要素が散見されるように思う。この辺り、何かしらに影響を受けたのではないかと邪推しており、このことについて前のイベントで訊いておかなかったことを後悔している。
24.暁WORKS『スイセイギンカ』
普通オブ普通。なにもかもが可もなく不可もなしの及第点。何としてもこの作品を描きたいんだという熱意が見えてこなかった(こういう印象論は唾棄すべきではあるが、まあそう思ったのである)。本作を通して、プレイする美少女ゲームの判断基準はメーカーやシナリオライターに置くべきなんだなということを理解した。つまり、『ハロー!レディ』が刺さらないなら他の暁WORKS作品も同様の可能性が高いと考えて良さそう(暁WORKSに限らず、全てのメーカーについてということね)。あとは阿見さんが可愛いです。
来年もちょっと他にやることがあるので中々手が出せないかもだが、本100冊と美少女ゲーム30本あたりをノルマにしておこうと思う。