2023年12月 2023年にプレイした美少女ゲームと読んだ本

 

 総括。

 今年はほとんどの時間を弁理士試験に充てていたために、読書量・プレイ本数数が端的に少ない。また、先日ようやっと合格して試験を終えたから揚々とゲーム・本ができるかと言えば、審決・判決のキャッチアップやら英会話やらをやる必要があるために、2024年以降もプライベートの時間をどれだけ確保できるかというのが不透明。

 こんなことでは、やるべきことをやる前に本当に人生が終わってしまうので、ちょっと真面目に考えないといけない。漠然と、3年ぐらいかけて実務を一通りできるようになりつつ、お金を貯めて無職やるなり大学院行くなりしようかな、というのは考えているが、上手くいくのか。上手くいかせるしかないわけだが。遅くとも30歳になる前には長期の休み期間を一度確保したい、これは絶対。

 各々2024年も頑張りましょう。以下、2023年にプレイした美少女ゲームと読んだ本です。

 

 

美少女ゲーム

1. RococoWorksVolume7

 J-MENT氏(本作のシナリオライター)は世界観について相当いろいろ考えていたんだろうけど、説明が不足気味 and/or 俺の理解が足りず今ひとつのめり込めなかった。スチルの使いどころやスクリプトにもやや不満が残る。部分部分でなにか言えそうでもあっただけに(例えば、スフィア=災害によって風景が変わるということとか。それこそ本邦は、本作が発売された前後において大地震により風景が一変するということの残酷さを多くの人々が経験しているのだから)、総じてもったいない1作。氏の別作品で言えば、『カタハネ』や『ことのはアムリラート』は既にプレイ済で大体同じような感想を抱いているので、多分馬が合わないんだと思う。決して悪い作品ではないんだけどね……。

 

2. GLacé『Timepiece Ensemble』

 タイトル画面が存在しないという異様な構成を取っている。ALcotハニカム系列なので、シナリオは一山いくら……と思いきや、ななみ√は思いの外満足のいく読後感を味わえた。キャラは十和子とテトメトがかわいい、なんだかんだ言って猫には勝てない。またBGMが凄まじく優れており、一聴の価値あり。特に「Happy Rising」、「Tipsy Lips」、「Night Swallowtail」、「Glance」は非常に良い。プレイ中に一覧から選択してBGMを任意のものに変更できるのも嬉しい。プレイ当時在住していた場所からほど近い北区中央図書館が作中で登場したという個人的なお気に入り箇所も含め、ところどころで満足度が高い、やってよかったと思える印象深い1作だった(なお、批評空間での評価は61点だったが、これは酷に過ぎると思う。いや、俺も抄√と桜織√は流し読みだったけども)。

 

3. Dontsugel『LACKGIRL』

 やはり渡辺僚一の描く戦闘シーンは本当に面白すぎる。求めている渡辺僚一のど真ん中が来てくれた。分量としては短めだけど、分冊でミドルプライスなのでこんなものでしょう。早くPART.Ⅱを出してもらうのと、システム面にかなり粗があるので改善してもらえると嬉しい。

 

4. raiL-soft『紅殻町博物誌』

 地図にない町・紅殻町で過去に流通していた珍奇物品を巡るすこし不思議なお話。美少女ゲームとしてはかなり重めのテキストなのでどうしても人を選ぶところはあるが、シナリオは間違いなく面白い。各所に凝らされていたロマン主義的な意匠がとりわけ好みであった。個人的な事情として、こういった重めのテキストを読む際は適宜姿勢を変えないと集中力が続かず、そのせいで没入しきれなかったのは俺の瑕疵。BGMは安心と信頼の松本慎一郎(Silver Bulletでは大変お世話になりました)。美少女ゲームBGMの作曲家の中では一番好きかもしれない、そもそも知っている作曲家自体が少ないわけだが。

 

5. ミルククラウン『イブキノキセキ ~琥珀の思い出の中で精霊は夢を見る~』

 いぶき√のみプレイして終了。キャラデザはかわいらしくて好みだが、いぶきに対する主人公の粗野な態度や危機意識の薄さに起因する非常事態時の対応が悪かった点は非常に気に障った。システム面やBGMの完成度も今ひとつといった印象を受ける。ただし終盤の戦闘シーンは悪くない。イブキビャクシンやテイカカズラノリウツギといった、言ってしまえばやや地味な植物を登場人物の名前の由来とした点にはシナリオライターの嗜好が伺え、好感を覚えた。関連して、イブキビャクシンは小豆島に樹齢1600年のものが存在するらしく、興味を持ったので機会があれば訪ねてみたい。

 

6. ユニゾンシフト・アクセント『流星☆キセキ ‐Shooting probe‐』

 トゥインク(CV.藤咲ウサ)はかわいいが、シナリオ面ではロケット開発というテーマを同じくする『はれたか』に敵うべくもない。既視感が強い筋立てなのに長すぎるので共通√以降は流し読み。OP楽曲は良い(特に「暗い空で君が迷わぬようにやさしく照らす」という歌詞が好き)。

 

7. KLEINre-laive

 桜沢いづみのイラスト目当てでプレイ。氏のイラストは2010年頃のSilver Bullet作品辺りのものが一番好きだが、この頃のイラストも非常に良いなぁ。シナリオライターの大和環は宇奈月けやきの別名義らしく、同氏の手による『Timepiece Ensemble』がかなりのお気に入りだったので本作も期待していたのだが、こずえ√のみプレイして終了。主人公のセリフと地の文が画面下のテキストボックスで表示される一方、他キャラのセリフはフキダシで表示されるために読みづらく、シナリオもあまり面白くない。今まで煮えきらない態度を取っていた主人公が終盤になって突然自身の好意を自覚し、そのまま流れるように事に及ぶ急展開にちょっと理解が追いつかなかった。また、OPで観られる、夕陽をバックにしてこずえが主人公の手を引くシーンにはかなり期待していただけに、肩透かしを食らったという印象が否めない。テキストにはたしかに宇奈月けやきらしい思考の跡が見え隠れしていたので、その点は満足。以上の通り、そこまで高い評価はしていないのだが、それはそれとして『り・れいぶ もえもえふぁんでぃすく』はしっかり購入しているという。

 

8. GLacé『天ノ空レトロスペクト』

 かの『Timepiece Ensemble』を生み出したGLacéの作品ということでプレイしてみたものの、case1を読んで面白くなる兆しが見えなかったのでギブアップ。テキストが児童向けのように感じられる、SORAHANE『AQUA』に近しい悪さ。つまり、制作陣がプレイヤーの平均年齢を理解しているのか疑わしい。また、無限の猿定理とか人の意志が偶然と必然にどう関わるのかとかいうのが表面的にのみ言及されているという感じを受けた。ちょっと入り組んだテーマでも真剣に正面から描いている美少女ゲームをいくらか知っていると、中途半端に登場する賢しらな用語はやはり苦笑いに堪えず、印象はあまりよろしくない。「レトロスペクト」とか「リメンブランス」みたいな語が出てくるセンスに少し期待したんだけども、まあそういうこともある。

 

9.Silver Bullet『雪影 -setsuei-』

 みんな大好き(要出典)Silver Bulletのデビュー作。同ブランドで『夏雪 ~summer_snow~』等を執筆した沖水ミルが明らかに本作に影響を受けていることが伺えたので、沖水ミル論を執筆するにあたって必須だろうということでプレイ。前半から中盤にかけて同一又は類似のシナリオが続くので飽きがやや強く、食指が伸びづらいのと、絵が若干人を選ぶようにも思う。True√で明かされる秘密も、まぁ予想の斜め上とまでは言えず(田中ロミオ原案なのである程度察せたというのがある。逆に言えば他の田中ロミオ作品が好きなら本作のオチも割とドンピシャなのではという印象。いや知らないけども)、ここまで引っ張ってそれかと肩透かしを食らった感は否めない。しかしながら、ここまで言っておいてなんだが、基本的にSilver Bullet作品というのは面白いとか面白くないとかでプレイするものではないので別にこれで良いのだ。なお、筆者は、前述の通り、沖水ミル論を書くことを目的として本作をプレイしたものであり、当初は本作と『夏雪』等との差異を探そうという意識で読んでいたが、特に何か言及すべき差異はなく、共通項――民俗学的な意匠であるとか、異質なもの、すなわち共同体からの排除の対象となるのがある種の伝統に根ざすもの(本作では「山人」、『夏雪』では「近親相姦」)であるとか、そのような排除が主人公とヒロインとのロマンティシズムをブーストしているとか――の方がよほど目についた。

 

10.LAPIS BLUe.『ももえろ濃霧注意報!』

 沖水ミルの初期に当たる作品。遺作『姉プリ』にも見られるループ&鬱要素はこの時期からすでに確認できる一方で、ジェンダー的な観点からは後期のそれと少なからぬ差異が見られることから、沖水ミルのテクストを云々したい場合には割りとやっておいた方がいい部類に入る1作。中身の話をすると、最後の種明かしシーンでカタルシスが特に得られなかったのと、そもそもその設定は必要なのかと疑念を持った点が各所にあり、妄想の世界に引きこもるか現実と対峙するかという正統にオタクコンテンツらしい筋立てではあるものの、全体的に荒削りという感じを受けた。衒気が垣間見える割には出てくる固有名詞がかなり有名なものに限られているのもちょっと(逆に、氏の後期作ではそういった衒気がほとんど見られないのは面白い変化だと思う)。立ち絵、CGともに絵が安定していない印象も強いが、味として飲み込めないという程ではない。特に結里となずななんかは全然かわいいと思った。結里は声がかわいいんだよな……。とここまで色々書いてきたが、例によって、こっちはもう面白いとか面白くないとかで沖水ミル作品をプレイしていないので、普通に満足している。

 

11.LAPIS BLUe.『BIFRONTE ~公界島奇譚~』

 「自分は他人に受け入れてもらえない存在だ」という自意識、「男らしさ」の失墜からくる無力さ、鬱要素の多い筋立て等、沖水ミルらしさがよく表れた一作。ただ、追われる身でありながらコンビニやら病院やらにフラフラ出向いたり、一部のルートで唐突に現実と虚構という二項対立を取り上げた割には特にシナリオに絡んでくるものでもなかったり、菜緒が主人公を好きになった理由が不明確であったりと細かい設定の詰めが甘く、緊張感やカタルシスに欠けるシナリオだったことは否めない。とはいえ、例によって(以下略)。

 

12.ステージなな『narcissu 1 & 2』

 こういう趣向の作品をインスタントに読んで満足しちゃうのもどうなんかなと思うが、自身がそうありたいと思っているだけに、やはり自分のことよりも他人のために祈るという無私の姿勢には非常に好感を覚えて良い。独身男性が攻撃的にならずに自身を保ち続ける数少ない方法の一つが、身近なところで言えば募金とか献血とかいうような奉仕を行うことですからね……。

 

13.CUFFS『倉野くんちのふたご事情

 普段、美少女ゲームはシナリオ目当てでプレイしているのであって決してエロ目的ではない、みたいなツラしといてこれです。もう終わりだよ。シナリオについては特に言うことなし(及第点とかではなく、本当に1行も真剣に読まずにスキップしていたので何も言うことがない)。強いて言うなら、口に入れるものを作る場所でセックスするのは絶対に止めていただきたいということくらい。

 

1.丹治信春『クワイン ホーリズムの哲学』
2.青山拓央『分析哲学講義』
3.村田沙耶香コンビニ人間
4.大今良時聲の形
5.中島義道『孤独について 生きるのが困難な人々へ』
6.J.D.サリンジャーフラニーとズーイ
7.アイザイア・バーリンバーリン ロマン主義講義』
8.海老坂武『サルトル実存主義とは何か』 2015年11月 (100分 de 名著)』
9.榎本博明『「対人不安」って何だろう?』
10.大塚英志東浩紀『リアルのゆくえ』
11.大塚英志『文学国語入門』
12.横山芙美編『ユリイカ 2015年9月号 特集=男の娘』
13.星期一回收日『ネコと海の彼方』
14.岩田靖夫『ヨーロッパ思想入門』
15.井手久美子『米国連邦商標出願ガイドライン
16.苫野一徳『別冊NHK100分de名著 読書の学校 苫野一徳 特別授業『社会契約論』』
17.蒼樹うめ『微熱空間』

→以降、姉弟間の恋愛を描いた作品が続く(とにかくそういうものが自分の中でアツかった時期だった)。

18.マルグリット・ユルスナール『姉アンナ…』
19.シャトーブリアン『ルネ』
20.糸杉柾宏『あきそら』
21.池上俊一ヨーロッパ史入門 原型から近代への胎動』
22.池上俊一ヨーロッパ史入門 市民革命から現代へ』
23.福島鉄平福島鉄平短編集 アマリリス
24.福島鉄平『こども・おとな』
25.ジャン・コクトー恐るべき子供たち